味噌VS醤油 地域に愛されているのは?
和食に欠かせない調味料といえば、味噌と醤油。
和食離れが進んでいると言われていますが、どちらも日本人の食卓を支える「なくてはならない調味料」です。
今回は、日本人が愛してやまない「味噌蔵と醤油蔵」に関するランキングです。
味噌と醤油の歴史を知りたい!
味噌のルーツは、中国の「醤(ひしお)」だと言われています。
日本に伝わったのは、飛鳥時代の仏教伝来の頃。この醤が日本の温暖多湿な風土条件の下で、独特の「味噌」になったと言われています。そして、味噌からしたたる液体の「たまり」がとても美味しいことから、さらなる進化を遂げて「醤油」になって、江戸時代に庶民の食卓をにぎわすように。つまり、味噌も醤油もルーツは同じ醤なんですね。
現代の味噌は、赤味噌、白味噌、麦や豆の味噌と地域によって好まれる味が違い、まさに「手前味噌」の面目躍如です*1。意外なことに、好まれる醤油の味も地域毎に異なります。関東地方出身者が「九州に行ったら、お醤油が甘くて驚いた」という話しを聞いたことがある人も多いのではないでしょうか *2。
*1参考サイト
*2参考サイト
世界一大きい醸造用木樽は日本にある!
醤油作りや、ワインやビネガーにも欠かせない醸造用の木樽。 その木樽の世界最大のものは、大分県臼杵市にあり、高さ、直径ともに9m、重さは45tにおよびます。
2007年に世界一大きい醸造用木樽として、ギネス世界記録に認定されました。
醸造には微生物の作用が重要なため、古くから樽材には外気温の影響を受けにくい木が選ばれてきました。
この世界一の木樽も、耐水性・耐アルカリ性に優れた樹齢400年のカナダ産ヒバ材で組み上げられています。素材の持つ断熱・保温機能が、樽内の発酵・熟成環境を最適に整えることで、風味豊かな醤油が作られるのですね。ちなみに、この樽では540キロリットル、1リットル醤油パックにすると54万本分の醤油が醸造されています。
郷土料理に貢献しているのはどっち?
まず、味噌蔵の登録件数から見てみると、2021年の登録件数は1,283件。 残念なことに、右肩下がりで減っています。
都道府県別人口10万人当たりの「味噌蔵」の登録件数は、1位が長野県で5.47件。2位が山形県で5.10件、3位が秋田県で4.66件です。
次に、醤油蔵の2021 年の登録件数は1,363件で、こちらも右肩下がりの傾向が続いています。 都道府県別人口10万人当たりの「醤油蔵」の登録件数は、1位が島根県で6.68件、2位が香川県で5.65件、3位が石川県で3.95件です。
みそ醸造ランキング!
蔵の多い上位県の郷土料理には、どんなものがあるのでしょうか。 まず、味噌蔵トップは「信州みそ」が有名な長野県です。長野県の郷土料理は、鯉こくが味噌味、信州蕎麦が醤油味。おやきや五平餅は、味噌も醤油も使います。
2位の山形県はどんがら汁、鯉こくが味噌味。芋煮、鯉のうま煮が醤油味。
3位の秋田県、きりたんぽ鍋は醤油味ですが、秋田で醤油が広く使われるようになる幕末期以前は味噌が主な調味料で使われていました。秋田味噌でいただく「きりたんぽみそ鍋」も美味しそうですね。
人口約10万人当たりの「みそ醸造」登録件数による都道府県ランキング
しょうゆ醸造ランキング!
醤油蔵トップの島根県の郷土料理は、しじみ汁が味噌味。出雲蕎麦、芋煮が醤油味。また、味噌と醤油の中間の調味料を使った「こしょみそ」も人気です。
香川県なら、打ち込み汁が味噌味。讃岐うどん、しょうゆ豆が醤油味。
3位の石川県は、めった汁が味噌味。治部煮が醤油味。
こうしてみると、味噌と醤油の郷土料理への貢献度は、甲乙つけがたいもの。どちらの調味料も、郷土の風土や食材に応じて上手に使い分けられているからです。地域に密着した地元の味の醸造所があるからこそ、郷土料理が受け継がれるのも忘れてはいけませんね。
人口約10万人当たりの「しょうゆ醸造」登録件数による都道府県ランキング
芋煮戦争勃発!山形醤油VS宮城味噌
秋になると、東北各地で行なわれる芋煮会。 春の花見に匹敵すると言われるほどの季節行事です。毎年この芋煮会で熱い論争が繰り広げられているとか。
「芋煮戦争勃発!」とまで言われるその論点は、芋煮の中身にありました。芋煮は里芋がメインの鍋料理で、山形県は牛肉で醤油ベース、宮城県は豚肉で味噌ベース。山形県人が「宮城の芋煮は里芋入り豚汁だ」と書き込めば、宮城県人は「芋が主人公であれば、何が入っていても芋煮」と応ずるなど、果てない論議が続いています。もちろん、「屋外で美味しい鍋を食べられて羨ましい」という県外からの声も上がっています。
ちなみに、山形県は味噌蔵数2位ですが芋煮は醤油味、対して味噌味の宮城県は、味噌も醤油もベスト10ランキング圏外となっています。
日本が誇る調味料、味噌・醤油の未来
2013年「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。
世界的に認められている「和食」の基本調味料の味噌と醤油ですが、日本国内では味噌蔵・醤油蔵数、出荷量ともに減少傾向にあります。
ですが、海外に目を転じると味噌・醤油とも輸出量は増加傾向にあります。コロナ禍の影響による2020年を除くと毎年輸出量が右肩上がりで伸びていますね。
どうやら、日本の味は本格的に海外に定着し始めているようです。
※農林水産省ホームページ 農林水産物・食品の輸出に関する統計情報
日本人に深く愛される調味料の味噌と醤油は、世界で愛される調味料へ
世界中で日本食ブームがおきており、フランス料理のソースに味噌を使うシェフもいれば、家庭料理に醤油を取り入れる外国の方も多いとか。日本の伝統的な味が、その国でどんな風に応用されていくのか楽しみです。
東北の芋煮戦争のように、フランスVSスペインで子牛の頬肉煮込みの隠し味に相応しいのは味噌か醤油かなんて論争がおきたら、日本人としては嬉しいですね。
「味噌VS醤油」は日本国内にとどまらず、世界各地で論争を巻き起こす日も遠くないのかも知れません。
コラム筆者:中嶋 良輔
【調査概要】 都道府県別 人口約10万人に対する「みそ醸造」「しょうゆ醸造」の登録件数分布及び年別の推移を掲載します。
■対象期間と抽出方法:2019~2021年の各4月時点で、タウンページデータベースの業種分類「みそ醸造」「しょうゆ醸造」に登録されている件数を集計し算出。
※1人当たりの登録件数は、小数点以下数桁になるため10万人換算をしています。
※掲載情報は2021年12月時点のものです。
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